生前にできる相続税の節税対策
2022.6.26
先日、「生前にすべき相続税の節税対策」をお伝えさせていただきました。
今回は、前回よりさらに難易度が高いものとなりますが、
生前にできる相続税の節税対策をお伝えいたします。
【保険金の非課税枠の活用】
相続人が死亡保険金を受け取る場合、
「500万×法定相続人の数」で求めた金額までは相続税が発生しません。
現金や預金で相続してしまうと、全額が相続税の課税対象となってしまいますが、
生命保険に加入して死亡保険で受け取れば、非課税枠を使え相続税の節税となります。
また、死亡保険金は遺産分割協議の対象外であるため、
相続開始後に受取人がすぐに保険金の請求手続きを進められる点も、
生命保険を活用するメリットのひとつとなります。
資産分割協議が終わるまで待つ必要もなく、受取人がすぐに支給手続きを開始できます。
【時価より相続税評価額が低い不動産の購入】
一般的に不動産は時価(売買するときの市場価格)よりも
相続税評価額(相続税の計算で使う価格)の方が低いため、
不動産を購入して相続すれば、現金で相続するよりも節税することができます。
ただし、不動産は遺産分割が難しく、相続トラブルの原因となりうるため、
対象となる相続人を考慮して、慎重に検討する必要があります。
また、賃貸アパートが建っている土地の相続税評価額は、評価額を計算するときに
他人に賃貸している点が考慮され、自宅よりも相続税評価額が低くなります。
そのため更地で相続するよりも賃貸アパートを建ててから相続した方が
相続税の計算で使う評価額が低くなり、税金の計算では有利です。
経営がうまくいけば賃料収入を得られ、相続後に相続人の賃貸収入ともなります。
リスクとして、賃貸物件の経営がうまくいかず損失が出ることも想定しておきましょう。
【小規模宅地等の特例の活用】
小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用の土地を相続する際に
一定の要件を満たすと使える制度です。
この特例が使えると土地の相続評価額を最大80%減額してから相続税を計算できます。
生前に対策し、特例の要件を満たすようにすれば、相続税を大幅に節税できる場合があるため、
居住用や事業用の土地を相続する際は特例制度の活用を検討すると良いです。
【配偶者居住権の設定】
配偶者居住権とは、亡くなった人が所有していた建物に配偶者が住み続ける権利のことを指し、
自宅を相続する際に所有権と配偶者居住権を分けて相続することができます。
配偶者居住権価格の算出方法は細かく決められています。
例えば、3000万円の住宅の権利を所有権2000万円/配偶者居住権を1000万円に分け、
配偶者が配偶者居住権1000万円、子が所有権を2000万円を相続する場合を想定します。
一般的に、配偶者が相続で取得した財産は、配偶者が亡くなったときに子が相続することとなり、
この時に相続税が発生します。しかし、配偶者居住権は配偶者に認められた権利であり、
配偶者が亡くなると消滅するため、相続税の対象とならず、相続税はかかりません。
つまり、配偶者から子への相続の際、配偶者居住権1000万円は消滅するため相続税はかからず、
子が自宅の所有権3000万円を得ることができ、節税ができます。
配偶者が1000万円分の財産を持っていると、通常ではこに相続するときに相続税が発生しますが、
配偶者居住権であれば相続税がかからずに済みます。
【養子縁組により法定相続人を増やす】
遺産を相続する場合、遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
養子縁組をすると、法定相続人の数が増える場合があります。
法定相続人の数が増え、基礎控除額が増えることで、
相続税がかからずに済む資産額が増えて節税になります。
ただし、養子縁組を行なった場合に法定相続人の数に含まれる養子の人数には上限があります。
・実子がいる場合は1人まで
・実子がいない場合は2人まで
なお、養子縁組をすると相続関係が変わり、
元々相続人だった人の遺産の取り分が減る場合があります。
また遺産の取り分が減ることで、相続人トラブルになる場合があります。
養子縁組を行う場合は、事前にトラブルにならないか確認して行うことが必要です。
相続税の節税対策は、いくつか存在します。
ただし、対策することで違う問題が発生することもあるため、
事前に相続受取人の中で理解しておく必要があります。
正しく対策すると、大きな節税効果を発揮する場合があるので、
様々なケースを想定しておきましょう。