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堅実な方ほどハマる「セット商品の罠」

2023.7.3

資産運用を始める時に気をつけるべきことがたくさんあります。
特に、定期預金と投資信託を同時に契約する「セット商品」に注意しないといけません。

今回は公務員勤めのAさんに起きた事例から、「セット商品の罠」についてお伝えしてまいります。

 

Aさんは、公務員として毎月安定した収入がある上に、仕事の忙しさと堅実な性格で無駄遣いをしないまま10年以上ほったらかしにしていたため、1000万円以上の貯金がありました。

そして、ある日銀行から電話がかかってきて「投資信託と定期預金のセット商品」を提案されました。
電話の中で、「定期預金の金利が最初の3ヶ月間3%になる」と聞き、その提案に魅力を感じたそうです。
Aさんは、「同じ銀行に置いておくだけなら、金利のいいセット商品にした方が良い」と思い、定期預金300万円、投資信託300万円でセット商品を申し込みました。

そして、3年の月日が経ちました。

3年後の資産状況を見てみると、実質10万円程度しか資産が増えていません。
もちろん、相場の状況によっても異なりますが、定期預金の金利が3%で、しかも投資信託にも投資しているはずなのに・・・・。

 

なぜこんなことになったのでしょうか?

 

現在、メガバンクの普通預金金利は0.001%です。
ここから税引きされるので、100万円を1年間預けても10円にもなりません。
そんな低金利の中でAさんが勧められた商品は金利3%。
通常金利の300倍で、100万円を3ヶ月預けた場合、利息は7500円になります。
ただ、やはりここから利子税が引かれるため、実際に手元に残るのは6000円、300万円の場合では1万8000
円です。

そして何よりこの商品の大きな問題が、「セット」ゆえ、投資信託も購入している点です。
高い利率を謳ったセット商品の場合、抱き合わせになるのは往々にして、手数料・信託報酬が非常に高い商品。Aさんの場合もご多分に漏れず、購入手数料3%という投資信託がセットになっていました。
すると、100万円に対して手数料だけで3万円とられる上、さらに信託報酬が年率2%なので、初年度は経費だけで5万円がかかる。
つまり、100万円を預けてもその時点で資産は95万円に減ってしまっているのです。

 

上記でお伝えしたとおり、定期預金は最初の3ヶ月だけの高金利のため、儲けは6000円のみ。
これだけでも全く得をしていないことが、はっきり分かるのではないでしょうか?

 

ポイントは、セットになっている投資信託の手数料や信託報酬があまりに高いことです。
こういったセット商品の場合、パンフレットで大々的に謳われているのは「定期預金金利3%」の方で、投資信託の信託報酬については非常に小さくしか表示されていません。そして、注意を促すような書き方はしていないので、見落としてしまいがちです。

つみたてNISAのインデックスファンドには信託報酬が「0.⚫︎%」なんて商品がいくらでもありますが、経験や知識がなければ、「メガバンクおすすめ商品の手数料がいかに高いか」に気づくのは容易ではありません。

この「信託報酬」とは、購入時一回だけで終わりの「購入手数料」とは異なり、商品を保有している限り発生し続ける経費のようなものです。仮に購入した投資信託の利回りが5%だとしても、信託報酬が年率2%であれば、実質利回りは3%になるということです。

さらにこの信託報酬は、販売を担う銀行・投資信託の運用会社・信託財産を預かる信託銀行の3社で分け合うシステムになっています。ゆえに、つみたてNISAのような信託報酬が安い商品は、販売サイドにとってうまみがありません。いくら売れてもつみたてNISAではほとんど利益にならないので、銀行側は「手数料が高く取れるセット販売をしなければならない」という仕組みになっています。

きちんと商品のことを理解していれば、おそらく購入する方は少ないのですが、
堅実な公務員やエリートの方がこのような商品を買ってしまうパターンは珍しくありません。
なぜなら、「メガバンクの行員がおすすめした商品」という大企業神話的安心感や、多忙のあまり、とりあえず資産運用をすべて丸投げしてしまっていることが多いからです。

Aさんのように「投資信託と定期預金のセット商品」を購入する方は、お金に余裕があるものの、時間に余裕がない方がほとんど。
そして、資産が大きく目減りすることなく、安定してお金が入ってきているので気にせず、そのセット商品を保有したままという状態になります。

今はまだ、致命的な失敗をしたわけではありません。
ですが、これがだんだん長期化していくと、投資した額や期間に対して大した効果もなく、信託報酬の負担がふみ重なるだけです。加えてインフレを考慮すると、資産は確実に目減りしていきます。

このような状態を避けるためには、必ず表面的な金利だけでなく、「信託報酬」や「購入手数料」といったコストの部分を明確に理解することです。

資産を増やすことも減らすことも、すべては自分の知識が与えるのです。

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