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六公四民の国

2023.5.17

「五公五民」は、江戸時代の年貢率を表した言葉で、年貢米の半分を領主が取るので、
残りの半分しか農民の手元に残らないことを指しています。江戸時代初期には「四公六民」でしたが、徳川八代将軍の吉宗によって引き上げられることとなりました。
これによって、大飢餓に見舞われた享保から天明年間には「百姓一揆」が続発したのです。

 

そして時は流れ・・・

 

2023年2月21日、財務省が2022年度の「国民負担率」が47.5%になる見込みだと発表したことにより、SNS上で大騒ぎになりました。47.5%はほとんど5割。つまり、所得の半分を国に持っていかれるということ。
そして、Twitterでは「五公五民」がトレンド入りしました。

 

そもそも「国民負担率」というのは、国全体の収入である国民所得に対して、税金や健康保険料などの社会保険負担が、どれくらいの比率になっているかを表した数字だ。国民負担率は、税金や社会保障負担の合計を、個人や企業が稼いだ国民所得で割ることで求められます。

国民負担率は財務省が毎年公表しているもので、ここ数年ほぼ同じ率であり、
2022年になって「五公五民」になったわけではありません。

財務省のHPにある国民負担率の国際比較のグラフを見ると、国際的に見て高いかどうか分かります。


出典:財務省HPより

 

こちらでは、アメリカ32.4%、英国46.5%、ドイツ54.9%、スウェーデン56.4%、フランス67.1%の5ヶ国しか出ていないため、他国も追加します。
韓国40.1%、スペイン47.3%、イタリア60.0%、オランダ54.4%、ノルウェー54.0%、フィンランド61.5%、
カナダ47.5%、オーストラリア34.5%となっています。

中国、東南アジア諸国、インドに関しては、財務省HPに統計がありません。
また、各国とも税制も社会保障システムも違うので断じることは難しいですが、一見では日本は決して高いとはいえません。とくに、韓国やアメリカなどよりは高いですが、欧州諸国に比べたら低いので、SNSで騒ぎになることに疑問を抱く方もいらっしゃると思います。

 

 

しかし、これは大間違いで、日本は「五公五民」より酷い重税国家なのです。

 

 

なぜなら、国民負担率がいくら高かろうと、それに見合う住民サービスがあれば、重税であっても重税感はありません。つまり、社会保障が充実した高福祉国家なら、一概に重税国家とは言えません。
現に欧州の国々は、重税国家であっても国民の不満は少ないです。

 

例えば、欧州諸国では教育は大学まで無償です。
ところが、日本では、国立大学ですら高額の入学金と授業料を取っています。
学生に学生ローンを組ませて、学費を支払いさせています。
教育の無償化は議論されているだけで、実現していないのが現状。
これで47.5%の国民負担率は、高いと言わざるをえない。

 

さらに、もっとカラクリがあります。
国民負担率というのは日本独自のもので、諸外国はGDP比で負担率を出しています。
ところが、日本は間接税を省いた国民所得比で算出しています。
つまり、間接税率の高い欧州諸国は、国民負担率が日本より高めに出てしまうのです。

 

そして、もう一つ。
当然のことですが、本当の国民負担率は、国の借金(財政赤字)も計算に加えないといけません。
なぜなら、国の借金である国債は、将来の税金で償還されるべきものだからです。
それで、財政赤字を加えて算出した国民負担率を「潜在的国民負担率」としています。

先ほどの図表1で各国の潜在的国民負担率が示されていますが、それで見ると日本はスウェーデンより高いです。財務省の発表には2023年での国民負担率の見通しがあり、それによれば、2022年度から0.7ポイント下がって46.8%となるが、潜在的国民負担率はなんと3.7ポイントも上がって61.1%です。

日本は、世界でも類を見ない「高負担低福祉国家」ということ。

 

しかも、国債発行には際限がなく、財政赤字は拡大する一方になっている。
このまま行くと、さらに潜在的国民負担率は上がる。

本来GDP比でいいものをそうせず、GDP比にしたものにわざわざ「潜在的」という名目をつけることは、ごまかしではないでしょうか?

日本経済が長期低迷を続けている一つの原因に、この国民負担率の高さがあります。
国民負担率が1%上昇すれば、成長率が0.3%低下するという調査研究レポートもあります。

すでに潜在的国民負担率は「六公四民」になっています。
所得の6割も国に取られてしまうので、これからを生きる方は辛いです。

日本に住む以上、決められた税金からは逃れることはできないので、
自分の身を守る為の対策を取ることは絶対です。

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