中国恒大集団の破産申請
2023.8.29
先日、中国の恒大集団が米国で破産法第15条の適用を申請したことが報じられました。
メディアでも「リーマンショックの再来」などと報道されていたので、不安を感じられた方も多いはず。
今のところ、金融市場はそのニュースに大きく反応していませんが、今後の状況は不透明です。
今回は、中国恒大集団の破産申請の背景や今後の見通しなどについてお伝えしてまいります。
この騒動の詳細からお伝えします。
中国の不動産大手である中国恒大集団(エバーグランデ)は、米国ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請しました。
同法が適用されると、米国外の企業が米国内の資産を差し押さえられることなく保護することができます。
今回の破産法の適用申請で、難航している外貨建て債務再編交渉を有利に前進させる狙いがあるとみられています。
恒大は、2021年に経営不安に直面、中国当局による不動産ディベロッパーへの規制強化を受け、2021年12月にはドル建て債のデフォルト(債務不履行)に陥っていました。
その後、経営再建を目指していましたが、中国の不動産市場は低迷し、資金繰りが苦しくなったという背景があります。
続いて、現在の中国不動産市場についてみてみましょう。
中国のGDPは約4分の1を不動産関連が占めているといわれています。
2010年台は不動産への登記的な動きがあって、不動産ディベロッパーが莫大な利益を上げていました。
これに対し、習近平国家主席は「住宅は投機のためのものではなく、住むためのもの」として、不動産ディベロッパーへの規制強化に乗り出したのです。
2020年には不動産大手の財務状況への監視が強化され、負債比率などによって資金調達を制限する「3つのレッドライン」が設定されることにもなりました。
これによって、不動産業界は低迷し、その業者の経営環境は一気に悪化したのです。
恒大が7月に発表した2021年と2022年の12月期連結決算の最終赤字は約11兆6500億円となり、債務超過に陥った。
また現在、同じ中国不動産開発大手の碧桂園(へきけいえん、カントリーガーデン)も資金繰り難に陥っていると話題になっています。
今後の見通しについてはどうでしょう。
恒大は、「海外の債務再編を進めるための通常の手続きであり、破産の申請ではない」と発表しているため、すぐに大きなショックが起きる可能性は低いかもしれません。
しかし、中国の不動産市場が上向く材料は少ないため、恒大の経営再建の見通しは立ちづらいのが実情。
このまま不動産市場が反転しなければ、恒大の問題から連鎖的に金融ショックが広がるリスクは否めません。
ただ、2021年に恒大の経営不安が報じられた際も、今回と同じようにリーマンショックに重なると報道されましたが、実際の影響は一時的なものでした。
中国と先進国の金融システムは、必ずしも密接な関係にあるわけではないということです。
メディアはネガティブな情報ほど、不安材料を強調して報じる傾向があるので、実際の問題より大きく取り扱われます。
そのため、リーマンショックの再来、という今回の報道表現は行き過ぎていますね。
今回は、恒大の問題について取り上げましたが、いかがでしたでしょうか。
中国経済はそれ以上にとんでもない状態となっています。
取り返しのつかない状況まで来ているので、今の中国を知り、将来の影響を少しでも想定しておかないといけません。
世界の流れを知ることで、これからのリスクを考慮することができます。