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定年後を幸せに過ごすために

2022.9.2

みなさんは、定年後の生活をどのように過ごされますか。

長きに渡り仕事という重荷からようやく解放されるため、
自分の趣味や家族との時間として過ごされる方も多いのではないでしょうか。

 

中高年の脳や知力と心理的成長について研究した【ジーン・コーエンさん】は、
人生の後半期における発達のステップとして、
「再評価段階」「解放段階」「まとめ段階」「アンコール段階」の4つがあると唱えました。
この4つのステップを順に踏んでいくようにすれば、
定年後の人生を幸せに過ごすことができると考えたのです。

 

今回は、この4つのステップについてお伝えします。

 

⒈《再評価段階》

これまでの人生や自分自身を見つめる(再評価する)ことです。
人生の折り返し地点までくると、これまでのように、いくらでも時間がある、
やろうと思えば何でもできる、うまくいかなかったことでも十分に取り返せるといった発想は現実的ではない。

だからこそ、これまでの経験を振り返って冷静に自分を評価し、
残された時間をどのように使うべきかを考えることが大切となります。
また、折り返し地点のように思えても、実際にはいつ死ぬか分からないので、
死を徐々にでも意識しておくようにするのも欠かせません。

 

⒉《解放段階》

時間的にあるいは精神的に縛られていた事柄が減った(解放された)ことを自覚すれば、
その結果、それまでの人生ではできなかったことをやりたいという意欲が湧いてきます。
「再評価段階」において死や残された時間を意識することで、
「今、やりたい。やるしかない」といった欲求が出ます。

退職や子の独立によって、仕事や家事、子育てといった「やらなければならない」ことではなく、
「やりたいこと」に焦点が当たるようになり、それは、不自然で無理をする自分ではなく、
本来の自分らしい言動を取り戻し、自分らしい暮らしぶりを獲得することにもつながります。

 

⒊《まとめの段階 》

「やりたいこと」をやっている“本来の自分”(再評価段階とは異なる自分)を改めて見つめ直し、
これまでの人生を総括することです。そして、「やりたいこと」に集中できている環境や、
「やりたいこと」に自由に時間が使える社会やそれを支える人々への感謝を持つこと。

このような気持ちは、自身の行動を恩返しや貢献に向かわせます。
人生をしっかり総括することで、死をより明確に意識できるようになり、
死を恐れない態度が身につきます。それによって、死後に子や周囲に迷惑をかけないための準備、
整理に落ち着いて取り掛かることができるのです。

 

⒋《アンコール段階 》

 

最後の「アンコール段階」に至ることができれば、コンサート等で本演奏が終了したあと、
アンコールとして演奏者が軽めの曲をリラックスしながらいかにも楽しそうに、笑顔をたたえて
演奏するように、気楽な気持ちで、人生の最後の余韻を楽しんでいるような状況になれます。

このような人は、続けてきた日々のルーチンワークに淡々と取り組み、物事のちょっとした変化や、
植物や空の様子などから季節が移ろっていく様子などに喜びが感じられるようになるのです。

取り組んできたことの結果の良し悪しに一喜一憂せず、他者の評価などは気にせず、
世間の常識にとらわれず、一般的な型にもはまらず、とても自由にしていられます。発言や行動から、
経験や知恵や自分らしさや深い味わいなどが感じられ、個性的な人格として肯定的に認められる。

 

 

この4ステップには、「現役時代の自分は、本来の自分ではない」というメッセージが込められています。
再評価段階は、自分がこれまでの人生のほとんどの期間において、
課せられた役割を演じていたに過ぎないと自覚するステップです。

本来の自分は、演技をする必要性がなくなり、「やりたいことができる」ようになった解放段階を経て、
まとめの段階に至ったときに初めて発見が可能になると言っています。

 

再評価段階は、発想の切り替えを促してもいます。
時間も可能性も無限にあると思ってしまうような年齢は過ぎているのだから、
時間はもちろん自分の能力や運にも限界があると理解し、
その前提で何をすべきかを考えろと言っています。なぜなら、「いつ死ぬか分からない」からです。

再評価段階のポイントは、「演じていた自分」と「死への意識」にあります。
これがあるから、解放段階で「やりたいという意欲が湧いてくる」のですが、
逆に言えば、やりたい意欲が湧いてこないのは、
「演じていた自分」も「死への意識」もないからということになります。

 

夫・妻、父親・母親という家庭での自分、会社や仕事において上司や部下や顧客の視線を受けている自分、
それらは全て演じるべき「役」だったのですが、ずっと演じているとだんだんとそれが「本来の自分」だと錯覚してしまう。

 

もともとその「役」は、時間的にあるいは精神的に縛られていた事柄だったにもかかわらず、
やっているうちに、それこそが自分だと勘違いしてしまう。
だから、退職や子の独立というきっかけがあっても解放された感覚がなく、
やりたい意欲が湧いてこないのだと思います。

 

もちろん「役」に没頭し、それを全うされたことは素晴らしく、称賛されるべきではありますが、
高齢期にはそれは「役」だったと気づかねばなりません。

 

親の「本来の自分」は、その子にとっても極めて重要です。
親を亡くしたとき、その子が「親のことを、あまり知らなかった」と後悔することがとても多いからです。そのとき子が「知りたかった」と思うのは、親が頑張って演じていた「役」では決してありません。

 

子が知りたいのは、まとめの段階で「やりたいことをやっている」親であり、
アンコール段階で「個性的な人格として肯定的に認められる」親であるに違いありません。

 

幸福な人生の最終盤を送る親を見ることができ、親が亡くなったあとも、
本来の親の姿を思い出して自分の子どもたちに語って聞かせられる。
こういう子は、本当に幸せだと思います。

 

この4ステップは、理想的な「終活」のガイドラインになります。
介護、医療、相続、遺言、墓、葬儀、モノの処分などをどうするか具体的に決めようという、
今のよくある「終活」も大切ですが、この4つのステップを参考にすることで、
人生の終盤の生き方、終り方についてもっと広い視点で考えられるようになるはずです。
今までより、誰かのためにできることを増やせるように。

 

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