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数次相続の注意点

2022.9.25

みなさんは相続を経験されたことはありますか。
ある方もいれば、今後経験される方もいらっしゃると思います。

通常の相続を経験された方は、何をしなければいけないかについて理解されているでしょう。
しかし、これからは「数次相続」が増えることが予想されます。
「数次相続」は、通常相続と手続きや流れが異なる部分があるため、
こちらも知っておくことが大切となります。

 

今回は、数次相続についてお伝えしてまいります。

 

 

【数次相続】

数次相続とは、被相続人が死亡し、相続が開始して遺産分割協議が終わらないうちに、
相続人が亡くなってしまい、次の相続が発生することを指します。
例えば、祖父が亡くなり、父や父の兄弟が相続人となって遺産分割協議を行っていたところ、
父の兄弟が亡くなってしまうようなケースが該当します。
この場合、祖父が亡くなった時点が一次相続、父の兄弟が亡くなった時点が二次相続にあたります。

父に兄弟が2人いた場合、一次相続の時点での相続人は祖父の子供3人(父と父の兄弟2人)ですが、
二次相続時点の相続人は、父の兄弟の配偶者そして父の兄弟の子供が相続人となります。

そのため、二次相続では、相続人は父・父の兄弟の配偶者・父の兄弟の子供となり、
相続人全員で祖父の遺産相続分の遺産分割協議、相続税の申告や納税まで行う必要があります。

 

 

【通常の相続手続きとの違い】

▼通常の相続手続きの流れ
相続が開始されると、死亡から3ヶ月以内に遺言書がある場合は検認及び内容を確認します。
また、同時期に相続人や相続財産の調査を行い遺産分割協議が開始されます。
相続放棄もしくは限定承認を行う場合の期日もこのタイミングです。

被相続人が事業を行っていた場合や一定以上の給与所得がある場合は、
死亡してから4ヶ月以内に所得税の準確定申告を行わなければなりません。
同時に所得税の納税も必要になります。
さらに、死亡してから10ヶ月以内に遺産分割協議書を作成して相続の手続きを行う必要があり、
その後相続の申告と納付を行います。

 

▼相次相続の手続きの流れ
相次相続とは、10年以内に2回以上相続が発生することです。
相次相続の場合、一次相続そして二次相続において、まず誰が相続人となるのか、
そして相続財産はどれか対象となるかを把握しなければなりません。
遺産分割協議書は相続人全員で行わなければならないため、
相続人の把握は重要なポイントとなります。

相続人同士で話し合い、遺産分割協議書を作成しますが、
その際、一次相続と二次相続の内容をまとめて作成するケースと、
一次相続と二次相続について分けて遺産分割協議書を作成するケースがああります。

もし、分けて作成する場合であれば、遺産分割協議書の冒頭部分に被相続人の情報が記載され、
一次相続の被相続人の次に二次相続人の被相続人の情報を記載することになります。
ただし、その肩書きは「相続人兼被相続人」となります。
これは冒頭部分だけでなく、署名欄においても同様となります。

被相続人が不動産を所有していた場合、不動産を相続した人が不動産の名義変更のための
相続登記を行わなければなりません。数次相続においては、原則として一次相続における相続登記を行い、
その後に二次相続の相続登記を行うことになっています。
ただし、中間の相続人が1人のみの場合は、相続登記を省略し、
1度の申請でまとめて行うことも可能です。(中間省略登記)
相続登記を行う際には複数の書類が必要となるため、確認が必須です。

 

 

【確定申告時の注意点】

▼期間の延長
相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内です。
ただし、数次相続の場合、一次相続で申告しようとしていた相続人の死亡を知った翌日から10ヶ月以内に延長されます。
ただし、延長されるのは一次相続、そして二次相続両方において相続人になる人のみです。
例えば、一次相続発生時は相続人ではないけれど、二次相続発生時に相続人となった場合は、
二次相続の被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内となります。
また、数次相続によって相続人が増えた場合でも、基礎控除額は変わらないことは覚える必要があります。
なぜなら、数次相続においては、一次相続発生時の基礎控除額を用いてい計算するからです。

 

▼新たな控除を受けられる可能性
現在、相続においては「相次相続控除」という制度が設けられています。
これは相続開始10年以内に、被相続人が相続や遺贈などによって財産を取得し、相続税を納税していた場合、その被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した人の相続税額から一定の金額を控除するというものです。
相次相続控除の対象者は、以下の条件に全て当てはまる方です。

・被相続人の相続人(相続放棄や相続権を失った人は対象外)
・その相続の開始前10年以内に開始した相続によって被相続人が財産を取得している
・その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人い対し相続税が課税されている

相次相続控除の額としては、前回の相続において課税された相続税額のうち、
年10%の割合で逓減した後の金額が、今回の相続にかかる相続税額から控除されます。

 

▼数次相続における相続放棄
通常の相続と同時に、数次相続においても相続放棄を行うことは可能です。
また、数次相続における相続放棄は一次相続そして二次相続それぞれについて、
相続放棄および限定承認を行うことができます。

通常では、相続放棄は自分が相続人であることを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し述べることになっていますが、被相続人や親族と疎遠になっていたなど、相続の存在を知ることができない状況にあった場合は、そのことが証明できれば、3ヶ月を過ぎた場合でも相続放棄が認められる場合もあります。

 

 

【相次相続と代襲相続を混在しないように注意】

相次相続の相続人を確定する際に代襲相続と混乱してしまうケースがよく見られます。
代襲相続で相続人となるのは、被相続人の被相続人の子供や孫といった直系卑属ですが、
相次相続において相続人となるのは被相続人の相続人です。
相続人をきちんと把握するためには、被相続人の戸籍謄本(出征から死亡まで)を取得し、
それに沿って確認することが確実です。

さらに相次相続では、申告および納税義務も次の相続人に引き継がれるので、
相続人の役割についても把握が必要です。
数次相続の相続税申告や相続登記を自分たちで行うことができますが、かなり複雑で時間がかかります。
仮に相続人の中に未成年者がいる場合、親以外の特別代理人をつける必要もあります。

できるだけスムーズに手続きを終了させるためにも、全部自分たちで行おうとするのでなく、
数次相続は複雑となることを理解し、弁護士や税理士に手続き依頼することも必要です。

日本では数年前から老老介護や認認介護が問題視されていることもあり、
どのタイミングで相続がやってくるかはわかりません。
ですが、少しでも知っておくことで落ち着いた選択を取ることができるのです。

 

 

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