定期預金の生前贈与は注意が必要
2024.6.15
自分の資産を子供の名義の預金口座に移したり、定期預金を名義変更したりすることがあると思いますが、子供名義の預金や定期預金は贈与になるのでしょうか?
みなさんはお分かりでしょうか?
今回は、生前贈与について定期預金を贈与する場合の注意点についてお伝えしてまいります!
▼はじめに、生前贈与について説明します。
『生前贈与』とは、資産を持っている人が亡くなる前に、自分の資産を他人に譲り渡すことです。
民法では「当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を示し、相手方が受諾することで効力が生じる契約」(民法549条)と定められています。
贈与する人が生前に贈与を受ける人と契約を結べば、民法上は生前贈与ということになるのです。
ただし、贈与契約を交わしていなくても、まとまった資金や資産を渡すことは贈与とみなされ、贈与税の対象となることがあるため注意が必要です。
贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
贈与する人は、贈与を受ける人ごとにそれぞれ課税方法を選択することができます。
「暦年課税」
暦年課税は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額をもとに、贈与税額を計算する方法です。
暦年課税を選択した場合は、いつでも相続時精算課税に移行ができます。
「相続時精算課税」
相続時精算課税は、60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子、又は孫が財産の贈与を受けた場合に選択できる課税方法です。贈与した資産のうち、年間110万円を超える額については、相続時に相続税の計算対象とされます。その際には、相続税額から過去に納めた相続時精算課税に係る、贈与税相当額を控除することが可能です。
ですが、一度相続時精算課税を選択してしまうと、その後同じ贈与者からの贈与について暦年課税に変更することができないので注意しなければいけません。
▼それぞれの控除額についてもお伝えしてまいります。
「暦年課税を選択した場合」
一人の人が、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた、贈与の価額の合計額が110万円までの場合、贈与税は非課税となります。
「相続時精算課税を選択した場合」
贈与を受けた財産の価額の合計額が、年間110万円を超える場合、2500万円に達するまでの贈与がくについて贈与税は非課税となります。また、こちらを選択した場合も毎年の110万円を超える贈与については、相続時に相続税の対象となるので注意です。
この他にも、「夫婦間贈与の特例」や「直系尊属から教育資金を一括贈与を受けた場合」などの控除もありますので、まとまった資産を贈与する場合、該当するものがないか確認することが重要です。
では親から子供への定期預金の名義変更は、贈与税・相続税の対象となるのでしょうか?
定期預金の名義が子供であっても、実質的な所有者が親である場合には、親の財産に属することになるので、相続税対象となります。このため、定期預金の名義を子供に変更しただけでは贈与とはみなされません。
贈与と認められるためには、親と子が贈与契約を結んだ後、親から子供への定期預金の名義変更が行われ、その名義変更後、子が親から定期預金の通帳や証書、届出印を受け取って管理し、定期預金を運用している状態にする必要があります。
この他に、「名義預金」についても贈与として認められるケースと認められないケースが存在します。
例えば、「孫のために内緒でお金を貯めていた場合」です。この場合、余金されたお金は被相続人(祖父母)の財産として、相続財産に含まれますので贈与としては認められませんが、孫と贈与契約を交わし、孫に口座を管理させることで贈与と認められることになります。
贈与契約の有効性を示すためには、贈与契約を書面で記録しておくことが良いでしょう。
▼定期預金を生前贈与するときの注意点
2つの注意すべき点があります。
「贈与契約書の作成と口座管理」
名義変更した定期預金が贈与であることを証明するために、贈与契約書を作成することが良いでしょう。
これは、後々のトラブルや税務署からの確認に対して重要な証拠となります。
契約書には、贈与する人と贈与される人の氏名/贈与内容/日付/贈与の金額を明記し、双方が署名捺印することが必要です。また、口座の管理は贈与された人が行うようにしなければいけません。
贈与契約後、定期預金を受贈者名義の口座に移すことが重要です。
贈与者が引き続き管理していると、贈与が実行されていないとみなされることもあります。
「相続税との関係」
暦年課税を選択している場合、贈与後7年以内に贈与者が死亡した場合、その贈与分は相続財産に含まれ、相続税の対象となります。相続税の計算時に考慮される可能性があることも覚えておく必要があります。
定期預金の名義を変更することはそれほど難しいことではありませんが、相続か贈与かで制度や課税される金額が変わってきますので、どの方法が一番良いについて事前に確認しておくことが大切です。