外貨建て生命保険の課税関係について
2023.11.24
資産運用の投資先は数多く存在します。
中には、外貨建て生命保険を活用されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
先日、友人との話の中で「投資はほとんどしていないが、外貨建て生命保険は活用している」ということを聞きました。しかし、商品の中身に関しては覚えていないとのことでした・・・。
投資をすることで将来設計ができますので、投資している内容は理解しておきたいところですね。
外貨建て生命保険は、「運用目的」で入られる場合が多いでしょう。
そして、運用利益は、外貨建て生命保険を解約して解約返戻金を受け取るか、
あるいは満期まで待って満期金を受け取るかのどちらかが一般的です。
ということは、受け取り方によって税金も異なります。
そこで、今回は、外貨建て生命保険の課税関係についてお伝えしてまいります。
▼課税関係について
①源泉分離課税となるケース
一時払いの保険で5年以内に解約したか満期を迎えたか、解約返戻金や満期金を受け取った場合。
源泉分離課税の税率は「20.315」です。
源泉分離課税のみで課税関係が終了するメリットとしては、配偶者控除や扶養控除などに影響が出ないことでしょう。
②一時所得となるケース
①に該当しない外貨建て生命保険の解約や満期は、一時所得として課税対象となります。(課税対象となる利益が生じた場合)
課税対象となる利益が生じなければ非課税になるのは、投資信託などと同様です。
課税対象となる利益に対する課税所得は、以下のように計算します。
”「受け取り額(満期や解約返戻金の額)ー払い込んだ保険料の総額ー特別控除の額(50万円限度)”
そして、この一時所得の額の2分の1の額を、給与所得や事業所得(自営業者)、雑所得(主に年金)などと合算して所得税や住民税を計算します。ですので、この合算によって税率が上がってしまう可能性があります。また、配偶者控除や扶養控除にも影響する場合があり、そうなると控除の対象から外れてしまう可能性もあります。
なお、一時所得は確定申告が必要となります。
よくサラリーマンの副業で生じた雑所得の額が20万円以下であれば確定申告が不要で、事実上は非課税になると言われていますが、それは他に確定申告の必要がなく、年末調整において課税関係が終了している場合などのことです。
外貨建て生命保険で一時所得が生じ、確定申告を行う場合には、「(先述の)ほかに確定申告の必要がなく」には該当しません。ですので、外貨建て生命保険の一時所得の確定申告の際には、併せて副業の雑所得も申告書に記載しなくてはいけません。
▼外貨建て生命保険の利益について
先ほどお伝えした「受け取り額(満期や解約返戻金の額)ー払い込んだ保険料の総額」の部分ですが、外貨建て生命保険の場合は、受け取り額も払い込んだ保険料の総額もどちらも外貨です。しかし、税金の計算や確定申告書への記載は「円」表記のため、外貨を円に換算しなくてはなりません。
一時所得を計算する場合の換算は「効力発生日(=解約請求書を生命保険会社が受領したひか満期日)」のTTM(仲値)が適用されます。
なお、源泉分離課税に該当する場合には効力発生びのTTB(買取価格)を適用します。
▼確定申告によって社会保険に影響があることも
外貨建て生命保険の一時所得は確定申告が必要です。
そして、源泉分離課税で課税関係が終了する外貨建て生命保険と、NISAや特定口座(源泉あり)は確定申告が不要です。
この確定申告の必要・不要の影響は、実は所得税や住民税への影響にとどまりません。
確定申告を行うことで、以下の社会保険に影響する場合もあります。
・自営業者や(給与所得のない)年金受給者の国民年金保険料
・65歳以上の方の公的介護保険の保険料の額と自己負担割合
・70歳以上の方の自己負担割合
・75歳以上の方の後期高齢者医療制度の保険料と自己負担割合
つまり、源泉分離課税で課税関係が終了する外貨建て生命保険は確定申告が不要ですから、社会保険への影響は気にする必要はありませんが、一時所得の場合、確定申告を行うことで社会保険料の額が上がったり、自己負担の割合が上がってしまうこともあるのです。
外貨建て生命保険で利益を得るにあたって、様々な影響があるか知っておくことが大切です。
また社会保険料の負担は年々大きくなっているので、これ以上の負担が悪化しないようにすることも重要となります。