権利消滅とは?
2024.12.4
少し前から郵便局が貯金の「権利消滅」のCMを流しているのをご存知でしょうか?
新聞やネットなどでも注意喚起を行っています。
「権利消滅」とは、自身が貯めてきた郵便貯金を払い戻しできる、返還請求できる権利がなくなるということです。注意喚起を無視してそのまま放置すると、権利が消滅してお金は国に没収されてしまいます。
中には、「権利消滅」=「休眠口座」と認識されている方もいると思いますが、「休眠口座」のお金は請求すれば戻ってくるため、同じではありません。
ちなみに休眠口座とは、2009年1月1日以降、10何以上にわたって取引がない預貯金口座のことで、休眠口座に預けられているお金は、使われない預貯金として民間の公益活動会に活用されることになっています。
ただし、休眠口座は預金者が気づいて引き出したいと申し出た時点で、いつでも出金や解約が可能です。
印鑑や通帳・身分証などを持参し、預けている郵便局や銀行に行けば払い戻しできます。
また、預金や貯金をした本人が認知症などで引き出しができなくなってしまっても、委任状を持った代理人なら引き出すことが可能です。
権利消滅で問題となるのは、休眠口座に預けた預金ではなく、2007年9月30日までに郵便局に預けた「定額郵便貯金」「定期郵便貯金」「積立郵便貯金」「住宅積立郵便貯金」「教育郵便貯金」などが対象です。
令和3年度は457億円、令和4年度は197億円、令和5年度は155億円とかなりのお金が没収され、国のお金となっています。
出典:郵政管理・支援機構より
これらの貯金は、預け入れてから20年2ヶ月が経つと払い戻し請求ができなくなり、国に没収されてしまいます。
ですが、なぜ没収されてしまうのでしょうか?
小泉内閣時代「郵政民営化」が叫ばれ、2007年10月から、郵便局は民営化されました。
この民営化で、貯金などを扱う「株式会社ゆうちょ銀行」が誕生しましたが、これは民間の銀行なので、それまで皆さんが国に預けていた「貯金」は、民間銀行が引き継いで預かることはできません。
ですから、2007年9月末までに預けた「貯金」は、「郵政管理・支援機構」が預かっていますが、この貯金については、「旧郵便貯金法」という法律が適用されていて、今でも国が預かっていることになっているのです。
民間銀行に預けている預貯金は、もし銀行が破綻したら1000万円+利息までは、預金保護法で守られることになっていますが、これを超える額については、破綻した銀行を清算したのちに預金者で按分されるので、100%守られるという保証はありません。
ですが、民営化前の旧郵便貯金法では、国が貯金を預かる形をとっているので、どんなことがあろうと100%国が貯金を保証していました。
その代わり、預入期間の満期を迎えた翌日から20年経つと、払い戻しの権利が消滅して、お金は国に没収されてしまうことになっていたのです。(現行では、通知の期間も入れて20年2ヶ月)
対象となる貯金がある人には、満期後10年と20年を経過するときに、届け出ている住所に案内の手紙が郵送されるようになっています。
対象者は、国に没収される前に払い出しを行うことが大切です。
また、相続が発生し、その途中で没収のタイミングとなるケースも想定されますので、
資産を継承することを考えていらっしゃる方は、事前に資産を把握しておくことが重要となります。